|
|
アポロン神殿で会った女の子は僕に花をくれた。
僕もお返しに、昼にマーケットで
買ったチョコレートをあげた。
うれしそうな笑顔がまぶしい。
一緒に写真を撮ろうと言うと、「喜んで!」と彼女。
その後も僕はしばらく周辺を廻りながら写真を撮っていたが、
その子も着かず離れずの距離で花を摘んだりしている。
日も段々暮れてきた。夕日に染まる
神殿の遺跡がより一層美しくなってきた。
この風景を撮ろうとまたデジタルカメラを構えると、
電池が切れた。換えの電池もない。
一回遺跡を出て買ってまた来るのもなあ、
と考えていると、その女の子が近くに来た。
そうだ。この子のほうが近くのお店とか知っているだろうし、
この子に電池を買ってきてもらおうか。
お金を渡して使いに出して、もし帰ってこなかったら、
とも一瞬考えたが、
この子はそんなことしないだろうという思いがあった。
それでその女の子に5リラ渡して、
単3電池を2本買ってきてもらうことにした。
その子は喜んで了承してくれた。
10分ほど待っただろうか。
その子の声に振り返ると、その子が手に電池を持って立っていた。
そして、「はい、お釣り」と3リラを僕に差し出す。
僕がいいよ、お駄賃であげる、というとうれしそうに
「テシェキュルエデリム(ありがとう)」と言う。
僕はあと少しここで写真を撮るというと、
女の子は自分は帰るといい、そこで別れた。
しばらくすると、離れた場所からまた大声で
「お兄ちゃん、じゃーねー」と手を振っているその子が見えた。
こっちも手を振ってまた神殿に目を移すと、
日もますます暮れて、
神殿の遺跡の創りだす影が濃くなってきた。
アポロン神殿を思い出すときには、
あの女の子のこともいつも思い出すだろう。
|